今月のすぺーすくじら

　

  

　

  「ペアルック」という言葉はバブル期に造られた和製英語で、おそらく恋人同士や夫婦、親子が同じ服を着ている様子を「お揃い」「オソロ」ではなく都会的に聞こえるようアパレルメーカーが流行らせたのではないかと推測しています。昔のように家で手作りする人や、仕立てを注文する人はどんどん減ってきてデパートではデザイナーズブランドがもてはやされました。おもえば海外で量産される既製服を次から次へと使いすてて行くことが豊かでトレンディだという風潮が主流でした。

　一方、私が民族衣装の魅力に目覚め蒐集を始めたのも、この頃からでした。特に京都で見つけたトン族の衣装の美しさに圧倒され、お店のご主人に無理を言って手に入れました。その後同じ村の衣装に出会い二枚の衣装を手に取り気付いた事がありました。それは一目で出身地が判るほどに衣装はよく似ているのですが、家族の為に手間隙惜しまず作りあげた衣装はそれぞれが世界でたった一枚の個別のものであったということです。

　子供の民族衣装は大人の小さいサイズや簡略されたものなどと安易に考えていると違っていました。上質な素材で魔を除けるように特別丁寧に祈りを込めて仕立てられていることがわかり愛おしくなります。このような伝統的な衣装作りは近代化の中で失われ工場で量産したもの、お土産品しか手に入れることができず残念なことです。