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 メコン流域の衣装を訪ねてのシリーズⅡはラオスを北上してミャンマーの衣装展を企画しました。130を超えるミャンマーの民族のなかでも、長さわずか200キロほどのメコン河の狭くなった上流域に暮らす民族は限られ、人口の多くを占めるビルマ族はエヤワディー河流域の中央平野エリアに居住しています。少数民族の多くが隣国との国境をまたぐように居住していて昔は帰属を表すそれぞれの民族衣装がパスポートの役割を担っていました。カチン族の衣装は中国雲南省に住むチンポー族の衣装とほぼ同様でした。インド国境に暮らすチン族の巧みで手の込んだミラクルな絹の腰衣を手に入れたのは20年前のことでした。ミャンマーの伝統民族衣装に魅かれ漸く30数点をコレクションすることができました。お楽しみいただければ幸いです。

 メコン流域を訪ねてⅡ ミャンマーの衣装展 

2020年11月8日よりネットギャラリーにて公開

GALLERY 

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 中国、インド、東南アジア諸国に挟まれたミャンマーは、130余にも上る民族のるつぼであり、それぞれの民族が日常生活において民族衣装に身を包んでいる。全人口の3分の2を占めるビルマ族は北方より移住し、11世紀に統一国家を成立させた。彼らは国土を南北に縦貫するエヤワディー河流域の平野に居住しつつ稲作を営んできた。またその他数多くの少数民族は、周辺諸国と国境を接した山岳地帯などに居住している。ほぼ全土が高温多湿な熱帯モンスーン気候で、気温は一年を通じて高い。このため少数民族を含む多くの人々が、男女ともにロンジーと呼ばれる通気の良い筒状の布を腰に巻き付けている。ロンジーは、男性は体の正面で、女性は左右いずれかで布を寄せてたくし込み、通常足首丈で身につける。近年は都市部でスカート風に短めに着装する女性も増えてきたが、伝統を重んじる風潮のためか、膝より短くすることはない。ロンジーには細かな格子文様が多く見られ、各民族の男女ごとに決まった色彩や模様がある。また都市部でも目的に応じた使い分けがなされ、教師や学生は緑、看護婦は赤、といったように職業によって色が決められている。素材は木綿が一般的であるが、儀式などで用いられる高級なものは絹の手織である。

 タメインと呼ばれる女性用のロンジーで波のうねりの様なモチーフはアチェイと呼ばれる。波模様は太古からこの地域で見られ、波、雷、雲などの自然現象から想をえたものといわれ、タイや中国南部の土器などの出土品にも同様の模様が見られる。マンダレーは19世紀後半まで王朝の都で、18世紀にはインドのマニプールから呼び寄せた織物職人によってアチェイを施した絹織物がさかんになり、王侯貴族がそれらを好んで用いるようになった。アチェイにはさまざまなバリエーションがみられるが、19世紀に入り王侯貴族の間では、文様の違いによる階級分けが定められた。

 

​「世界の伝統服飾」文化学園服飾博物館編集より

伝統衣装の染織技法

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 ミャンマー北部に暮らすカチン族(中国ではジンポー族)腰衣、獣毛色糸で縫取織、赤地は既婚者が着用

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 ミャンマー北部に暮らすカチン族(中国ではジンポー族)腰衣、獣毛色糸で縫取織、白地は未婚者が着用

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 チン州北部“「ハカ族(Haka)」の手による、祝祭儀礼用の絹縫取織ボディクロス”コンナク・プアン(Congnak Puan)絹、天然染料/経縞織(経地合)、縫取織、緯紋織、二枚接ぎ

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チン州西部に生活する「マラ族(Mara)」の手による、縫取織装飾の褌布(ロインクロス)綿、絹、天然染料/経地合及び緯地合、両面縫取織

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ラカイン(ヤカイン)州に生活する「レイトゥ族(Layto)」の手による、経縞&片面縫取織の前掛け布、コットン、シルク、天然染料、ピンクは化学染料/経地合、片面縫取織、両面縫取織、片面経紋織(フォールス・エンブロイダリー)

 

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ラカイン(ヤカイン)州に生活する「カミ族(Khami)」の手による、片面縫取織装飾の褌布“パタリ(patari)”技法 木綿、絹/経地合、片面緯紋織、片面縫取織(フォルスエンブロイダリー)、浮紋織(黒×黒・地紋)
 

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ラカイン(ヤカイン)州に生活する「コウンショー族(Kounsho)」の手による木綿地・片面緯紋織装飾の頭布”トンパウク(tonpauk)”

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ラカイン(ヤカイン)州に生活する「カミ族(Khami)」の手による、片面緯紋織の胸当て布“アケン(akhen)”木綿、絹、染料、ビーズ/経地合、片面緯紋織、緯糸遣いブレード&タッセル、刺繍
 

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インド、ナガランド州のアンガミナガ族 ミャンマーとインドの”辺境”と呼ばれてきた厳しい自然環境の中で生活を続けてきた民族の腰衣、手紡ぎの細手の木綿糸、腰機で緻密な経地合の織物、10~20cm弱の片面縫取織の接ぎ合わせ

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カイン州に生活するスゴウ・カレン族女性の婚礼用衣装、手紡ぎ木綿・天然藍をベースに仕立てられた服地に、刺繍と”ジュズダマ”数千個がびっしりと縫い付けられたもの、結婚前はほとんど装飾の無い白木綿の上着を着用する人々ですので晴れの日の衣装としての華やかさが際立つ

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マンダレー管区の“アマラプラ(Amarapura)”で手掛けられた、シルク綴織による儀礼用の衣装スカート”ルンタヤ・アチェイク(luntaya acheik)”絹、天然染料、木綿(腰布・裏布)/綴織、縞織、朱子織(裾布)

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 絹、天然染料、木綿(腰布・裏布)/綴織、縞織

織幅56cm、長さ224cmの絹綴れの2枚のパネルを接ぎ合せたもの用途等詳細は不明

 

 

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